七月大歌舞伎「柳影澤蛍火」「流星」「荒川の佐吉」「鎌髭」「景清」

七月大歌舞伎

2016年7月21日 於歌舞伎座
(昼の部)
 「柳影澤蛍火」
 「流星」
(夜の部)
 「荒川の佐吉」
 「鎌髭」
 「景清」


 七月の歌舞伎座は、猿之助と海老蔵のタッグ。

 猿之助と海老蔵が同じ舞台でがっつりからむ芝居を最後に観たのは……いつだったかなあ。海老蔵の襲名。宮本武蔵の舞台。うーん、それくらいしか思い出せない。猿之助襲名のときは、海老は中車と猿翁の演目に出ていたのね。
 でも近い将来、海老蔵が団十郎になるときは再び猿之助との芝居が観られるのでしょうね。その予行演習?とか思って見ました。

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 夜の部は、初めて三階東の席をとってみました。東10番。三階席で花道がばっちりみられるのは東席だけ。でもかんじんの舞台は右半分は見えない(^_^;) そのうえ、上手にいる俳優の声が聞こえにくいので、三階席はやっぱりその舞台を見たことがあるリピーター向けの席だと思います。


「柳影澤蛍火」
 柳沢吉保役・海老蔵の悪のお芝居がみどころ。猿之助は、吉保のライバル僧侶。
 これは昭和45年初演の新作歌舞伎だそうで、私は内容もお話もまったく知らないで見た。柳沢騒動「護国女太平記」的なやつかと思ってたら、そんな型通りの話じゃなかった。私の回りの席の人たち(多分歌舞伎ファンじゃない)も、幕間にお弁当食べながら「おもしろいね」と口々に言っていた。海老のうらぶれた浪人時代から、いいなづけを騙して大奥にいれて、さらに出世出世。下世話っちゃ下世話ですが、このあとどうなるんだろう?的な興味を引くお話の流れ。何しろ観客の大半は見たことがないお話なのだ。
 それでお話の感想なんだけど、結末?にあたる部分、吉保が病気で引きこもっているあたりからだけど、結末は微妙かなあ。なんかこうスッキリな感じがしない。柳沢海老蔵が腹の中まで真っ黒な悪人なら、最後自滅して「ざまあ」で観客もすっきり終われるだろう。右肩上がりの絶頂時にいきなりドーンと足下すくわれて無念の最期でもカタルシスがあると思う。だがこの吉保は心底真っ黒じゃない。我が身の栄達のために何でもするといい、自分の女を踏みにじり、権力者にはこびへつらい、都合の悪いものは手にかけて抹殺、と徹底している、だが、そのわりには憂鬱そう。女も男も誰も幸せになれないお話なのだ。悪になって欲しいものは手に入っても、幸せにはなれない。これが作家の書きたかったことなのでしょうかね。
 この演目を海老に勧めたのは猿之助だそうだけど、成田屋の十八番といえばたいがい正義のヒーロー役だから、こういう裏も表もある悪役って海老ファン的に良かったんじゃないかしら。お結末は微妙って書いたけど、いろんな海老蔵が見られて絵面もとても良かったし。
 猿之助は、とっても珍しいような気がする斬られ役。断末魔の叫びとともに川に落ちる。ここもわくわくしたわ。
 ヒロインは尾上右近。二十代の歌舞伎俳優はセリフのある役をなかなかもらえないんだけど、これは女の一生的な大役だった。

「流星」
 猿之助の舞踊の一幕。牽牛と織姫の逢瀬にやってきた流星。雷さん一家のどたばたを踊って、去ってゆく。面をとっかえひっかえの踊り分け。そしてびっくりすることに、宙乗り用の器具を衣装のしたにつけたまま踊っていたのですね。そして宙乗りでひっこみながらも踊っている。
 この舞踊は、私は三津五郎のをTVで見たことがある。(三津五郎は飛ばない。)巳之助もいずれ自分の芸にするんだろう。その巳之助は牽牛役でずっと最後まで舞台で猿之助を見てるのも、後々の伏線?になるのでしょうね。

「荒川の佐吉」
 猿之助の佐吉。三代目もやってる役だそうだけど、私はそれは見たことがない。昭和7年初演で、わりとよく上演されている人気演目。昼の部の柳沢吉保ともども新作歌舞伎なので、セリフとかは普通の時代劇なかんじで、話もわかりやすい。
 お話。元は大工で、ヤクザのパシリをやっている佐吉。浪人崩れの武士にシマをとられて、一家は没落。佐吉の手に残ったのは、親分の娘が産んだ盲目の赤ん坊だけ。大事に育てて数年後、生みの親が子供を帰してほしいと人を介して要求してくる…。
 縄張りのとったとられたの話かと思ったら、実は子育て人情ものでもあり、父性に訴えるお話。
 前半の佐吉はヤクザの下っ端なので、モブキャラだ。ケンカも弱いし、いまいちダサい。なんでヤクザになったのかはお話の中にあまりはっきり出てこないが、仁平親分の男気に惚れてとかなんだろう。だから落ち目の親分を見捨てるようなことはしない。だけどそんな佐吉の誠意は親分にもお八重(親分の娘)にも通じない。親分は死んじゃうし、娘はどっか行っちゃうし、結局赤ん坊だけが手元に残った。ここがどん底。
 後半は、子供をめぐって実親ともめる。親分の敵討ちも成し遂げ、ひとかどの親分になるわけだが…
 私は、猿之助は地力のある役者と思う。声が大きいとか滑舌が良いとかそういう意味じゃなくて、なんていうかセリフがびしびしと言語中枢を直撃して、気持ちをごっそり持っていかれる。映画でも演劇でも、劇というものは見てる人の感情を動かすものなのね、猿之助はセリフに何か強い力があるんだと思うわ。
 ちなみに、この演目は仁左衛門の当たり役だそうで、猿之助のは仁左衛門の演じたのとは印象が違うそうです。それは見てみたいですね。
 で、私の感想なんですが、お八重は別に謝ることはないと思う。自分の人生だから好きなようにやればよろしい。これを書いた作者がどう思ってるかはわからないけど。

「鎌髭」
「景清」

 景清もの2セット。
 海老蔵の歌舞伎十八番。華やかで、裏も表もないわかりやすい設定とお話、適度に短い上演時間、海老様を見る演目。
 演劇評論家の「歌舞伎はショーじゃない」的な批判を読んだけど、私はこれはこれでいいと思う。客もみんながみんな高尚じゃあござらぬ。ロゴスの支配から解放されて、萌えを充電する、こういう疲れない演目は良いヽ(´ー`)ノ 私は海老蔵は特に好きな俳優というほどでもないんだけど、やっぱりかっこええのう。
 それで、特にどこが何という疑問もない演目なのだけど、「歌舞伎十八番」と「景清」については、家に帰ってから復習。
 検索すればすぐ出てくるけど、「歌舞伎十八番」は古い形がきちんと現存している演目ではないそうなのだ。何度も改作されていたり、江戸時代中期ですでにタイトルしか残ってなくて内容不明だったり。それは娯楽が消耗品であり、保存することよりも新しいものを作る方に力を注いでいたからだと思う。今では歌舞伎は伝統芸能という文化遺産だけど、江戸時代は庶民の娯楽。作っては消え、作っては消えを繰り返してきた。
 「歌舞伎十八番」てなんだろうというと、私は「団十郎ベストアルバム」みたいなものだと思うけど、アーティスト自薦のベスト盤だと本人の思い入れのあるB面の曲とか不人気曲とか入ったりするじゃない? あるいは演目の並びに何が呪術的なあるいはアート的な意味があったのかもしれない。
 ちなみに「鎌髭」は現存しない演目で、海老蔵の代になってからの新作らしいです。
 「景清」についても調べました。
(景清ってだれ??(^_^;))
 すいません、私はこの人物は知らないです。「源平討魔伝」の主人公キャラが景清なのは知ってるけど、それって誰?義経の家来?(^_^;)程度の認識。
 景清は平家の武将で、実在の人物らしいけど、その生涯はよくわかってないらしい。歌舞伎の景清は、不死身の超人である。
 なんで景清なんだろう?
 歴史的に敗者である平家の家臣が、スーパー超人て。
 ここでも平家方だ。反権力的な立ち位置に意味があるのかな。ばーん!と牢破りをする話でしょ?
 
七月歌舞伎座の感想
 猿海老のタッグは良かった。がっつりとお芝居。舞踊も歌舞伎十八番もあり、全体的に若い布陣。通し狂言はいいよね。歌舞伎詳しくなくても、お話おっかけて最後まで飽きないで見られる。また来年も見られるかな。

 私、四代目で「伊達の十役」を見たいです。歳をとったらできなくなる演目なので、そろそろやってください。お願いしますよ。
 来月につづく。8月も歌舞伎座に猿之助様はおでましになるのじゃ。

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