「色彩の檻」「禽舎の贄」

「色彩の檻」西野花著
「禽舎の贄」水原とほる著

 BL本の感想です。今回は2冊セットで。
 なぜ違う作家で2冊セットかというと……本当にたまたまなんですが、おなじようなシチュエーションで日本画の絵描きが主人公のお話に遭遇して、これはちょっと面白い……。なんていうか、二冊読み比べて、作家の個性?作風?みたいなのが鮮明に出てて、なるほどなあ…と思って。この2冊について感想文を書く。


(↓ネタバレ感想)



 先に読んだのは
「色彩の檻」西野花著
でした。
 お話。父は日本画の大家で、主人公はその息子で弟子で愛人(!)。父子の禁断の関係を強いられながら暮しているのには、実は過去の複雑な事情がある。その閉鎖空間に画廊の若社長が入ってきて、主人公を外の世界へ連れ出す。
 西野作品の特徴は、やっぱりHシーンにあると思う。Hシーンに大きくページをさいて、内容もあれもこれも。受け攻めの言動や心理をかなり微に入り細に入り積極的に描写する。その印象のせいなのか、禁断の父子相姦も背徳感や悲壮感よりも、むしろこんなでも父親に愛情のようなものがあるんじゃないかと思えて、私は途中まで「あれ?お父上が本命の攻めなのか?」と思って読み進めていたくらいだ。画廊の若社長も加わって3Pがお話の真ん中あたりにあり、ここまでは文句なく面白かった。このあとどうなるんだろうo(^-^)oドキドキ
 後半、相思相愛の若社長と屋敷を出てからは、ここからはフツー。前半のどろどろを洗浄?するかのようなラブラブが続くわけだが、ページを確保したわりには何か物足りない気がしたのは、前半が過激だったからか? 私はまた屋敷に舞い戻ってしまうのではないかと思ったけど、そんなめんどくさいことにはならなかった。
 私は、この作品になんかちょっと足りないと感じたのは、後半でのお父上の描かれ方じゃないかと思う。奥さんをああいう形で失って、息子を束縛を強いて、でもそんな歪んだ心を作品に昇華してたんだよね?大先生の画家だから。じゃあ、息子を手放してからいったいどんな絵を描いたのだろうか。それは家族の肖像みたいなものじゃないと、私は思う。
 ただやっぱりBL作品としては、お父上は悪役であり、若社長(攻)の引き立て役の範疇を出てはいけないのね。主人公が父親を否定しきれないのは、自分も絵描きだからで、この話は父上をメインにした方が面白かったかもしれないと私は思うけど、商業BLでそれは読者の望むことではない、のでしょうね。



「禽舎の贄」水原とほる著
 お話。主人公は芸大で日本画科を出て画家の道へ。恩師で日本画の大家の内弟子であり愛人(!)として、恩師の屋敷で暮している。絵のテーマは一貫して鳥で、屋敷にはさまざまな鳥を囲って飼育していた。ある日、商談でやってきた空間コーディネータと出会い…
 このお話は、鳥のイメージがものすごく鮮明。屋敷で飼ってる鳥の様子や種類が具体的で、それが彼が何を描こうとしているのか、それはどんな絵なのか、が脳内で鮮明に想像される。また画学生だった主人公の、指導者や同期生の話など、ただ絵を描き続けたい主人公にとって厳しい世界もあり、いろいろ細かく作り込まれた作品世界なのだ。
 私は、個人的にこの話の萌えポイントは、画家先生が自分と主人公の作品を融合?しようとして、要するに主人公の作品のパクリをするのだが、しかしいずれ自分の雅号を譲りたいという遠大な野望?だったりする。この先生のお話的役割として恋愛対象(ラブシーン)としてはイマイチ萌えがなかったのだが、この主人公の芸術を認めているゆえの、いずれ全部おまえのものになる的な発想はちょっと萌えた。
 後世の鑑定家にかかれば、きっと「この絵は雅号は○○になっているけど、実は弟子の××作で」とか「この時期の弟子の××の作品の下絵が大量に残っていて、それに反して師匠の○○は作品を残していない」とか、すぐばれると思うけど。私は絵の方向性が同じなら、師匠のものは全部自分のもので納得していいと思うんだけど、主人公がそれを拒む(雅号を継承したくない&師匠の残した下絵とかの資料なんかいらん)のは、それは描きたい絵が違うから!だよね。それを主人公は主張しないで、コーディネータくんが代弁してくれる。

 絵描き設定に限らないと思うけど、
・師弟関係が先にあって
・主人公が望まない性的関係を強要されて
・後から本命の彼が現れて、主人公を救い出す
というシチュエーションの作品って、多分他にもあるんじゃないかと思います。
 この状況の作品で描き方の難しいのは、まず師匠にあたる人物じゃないかと思います。主人公が同業者だと、恩師の人格がいくら悪くても、作品なり才能の偉大さをわかってるので、簡単には否定できない、という心理的な足かせがある。先生になかなかノーといえない前提。なので、この二作品もラストは先生にちょっと心を残しておわる。完全な悪役にはしてない。
 そして本命くん(攻)は、お話の途中から現れることになるのだが、ここから恋愛モードに発展していくのが、けっこう高いハードルな気がする。昨日まで絵のことしか考えてなかった主人公くんが、先生といやいやHしていた主人公くんが、この人ならいい(〃▽〃)と思うのはなぜなのか?(マンガだったら、ばーん!と出てきて顔アップだけで納得できるけど。)私は、なんかそこがうまくつながらなくて、最終的に先生のところへ戻ってしまうのではないかと思えてしまったのね。そんなことあるわけないとわかっていても。

 BL作品も世の中にいーっぱい出回っていて、設定がかぶってる作品なんていくらでもあると思います。今回たまたまこの2つでしたけど、作風がまったく違うので、同じ設定とは思えない(^_^;)
 西野作品の方はHシーンの描写に文字をいっぱい使っている。レンズがぐーっと人物に寄っていくかんじ。
 水原作品の方は鳥の世話とか仕事の話などの背景の作り込みに文字をいっぱい使っていて、映画や舞台のセットでドラマを撮ってるかんじ。
 この違いが読めておもしろかったです。お話の内容については、私は絵の師匠がメインの話の方がおもしろかっただろう…というのが感想です。

※追記。ストーリー上でさかんに描いていた、主人公をモデルにしたHな絵は、あれからどうなったんだろう。大先生の直筆スケッチ、それも普段花鳥風月描いてる大先生の描いたH絵、なんて超レアですよね。後世の研究家たちにとって、それは大画伯の私生活をおしはかる貴重な資料となるにちがいありません、という学術的見地から私は述べております。


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