日出処の天子(完全版)第6巻

日出処の天子 〈完全版〉/第6巻 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)日出処の天子 〈完全版〉/第6巻 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
(2012/04/23)
山岸凉子

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 第6巻の物語。日本史教科書の出来事は、蘇我馬子による泊瀬部皇子(崇峻天皇)殺害。

 お話。刀自古は男の子を産み、厩戸皇子は斑鳩に宮を造営したが、毛人はどちらにもなかなか顔を出せないでいた。蘇我氏と大王側の対立はいよいよ激化し、双方兵を集めてにらみあうほどに。馬子はついに大王殺害を決行。倉梯宮は炎上し、その中で毛人は布都姫と再開を果たす。

 悩める毛人。厩戸とのつながりがなくなったわけではなく、厩戸については今でも気になる存在ではあるようだ。しかしその一方で布都姫のことは後宮入りした今でも引きずっていて、その名前を聞くだけで平静ではいられない。
 なんでしょう、こいつ。この、なんていうか、なんとも不安定な、よろめき感? 王子にも未練あるし、女のこと、子供のことも、うだうだと。いやいや、毛人が物事をすぱっと割り切れない、そういう人なのはわかっているけど。

 昔読んだときは、とにかく厩戸になりきって読んでいたので、ちょっとでも毛人が接近するだけで、どきどきしたものだった。斑鳩宮が襲撃されて、毛人と隠し部屋に潜んでいるだけで、そりゃあもうどきどきでした。このまま毛人と珠玉エンドになるんじゃないかと、史実も忘れて期待したりした。そのあと毛人がまた布都姫にうつつをぬかすようになっても、でも運命の赤い糸は自分とつながっているんだと、まだ信じて読んでいた。
 だから毛人に対して、否定的な感情は一切わかなかった。
 でも、今は、あれから30年もたってみると、さすがに私も歳ですな(^_^;) 厩戸も毛人も、こんな男のどこがよかったのか、なんだかわからなくなってるのである。昔読んだ時の「好き」という感情はもちろん記憶にすり込まれて残っているから、今でも厩戸の視点で毛人を好き(≡゚∀゚≡)という感覚はある。昔は私も若かったので男がよくわかってなかったのかもしれないが、今読むと、毛人が何を考えているのかがよくわかって(はっきりいって何も考えてない(^_^;))、残難なイケメンという印象に。
 もっとも、ここで毛人がばしっと物事を割り切って動いたら一気に物語が終わってしまう。それでは少女マンガにならない。少女マンガのボーイフレンドはたいがい役に立たない(^_^;) 少女マンガのBFというのは、ヒロインががんばった勲章であるから、基本的に動かない。男の方から「俺がなんとかしてやる」とか言い出したら、そんな男前が活躍するのは少年ジャンプだからね。

印象に残ったシーン
厩戸「毛人、おまえ酔っているのか?」
毛人「いいえ!」(きっぱり)

 夜道、鬼どもをひきつれて、笛を吹いて現れる王子。毛人が王子と遭遇するエピソードは、その多くは超常現象や霊的体験を伴ったものだ。それは王子の超人性や不思議な魅力を表現しているのと同時に、非日常体験を共有するというイベントでもある。二人だけの秘密、というやつである。王子の起こす奇跡のような光景の、その同じ眺めを二人で見る。
 厩戸が(なり切った私が(^_^;))自分たちは運命の赤い糸で結ばれていると信じているのは、こういう経験からくるものなのだ。
 この場面は,毛人は思いっきり酔っている。そのせいか,普段なら見て腰を抜かすような鬼の出現も平然としている毛人。ここで厩戸は気付く。自意識のあいまいになっている時の毛人は、眠れる能力が表に出てきてちょっと超人。だから普通の人には音が出ないという笛も、酔っている毛人なら音が出せてしまう。毛人も自分と同じ。やはり私たちは何か内なるものでつながっているのだ。

厩戸「これは毛人に似ているな」
 生まれたばかりの山背を見ている厩戸。厩戸の言葉にどきっとする刀自古。
 あ、なんかこういうシチュエーションてなんか見たことがあるような……。そうそう,源氏物語。源氏の桐壷帝が、藤壷が産んだ子を光源氏に似てるとかいう場面。私は桐壷帝は気付いていたと思うんだよね。厩戸がわかっててぬけぬけと言い抜けてるように。

厩戸「この子は私の跡継ぎにするのだ。できれば大王の位につけてやりたいと思っている」
 そして、わかっているからこそ溺愛する。自分が産んだわけじゃない。好きな女が自分のために命懸けて産んだわけでもない。そんな赤子をなぜ愛せるかというと、それは毛人のコピーだと思えるからだ。

厩戸「しかし私もまた大姫のような顔をしているのかも知れんな」

 ここらへん,私、完全に厩戸になりきってます(^_^;) 世にも不幸な顔をしている大姫。こういう感情にさいなまれている時の女の顔はものすごくブスになっている。
 でも厩戸には自覚がある。大姫に恨まれるようなことをしているという自覚はあるから、大姫がなぜつんけんしているのかわかる。なんの自覚もなく、純愛だかなんだか知らないけど、ただ自分のことしか頭にない毛人よりは、ちょっとマシなのかも。……だからって大姫が何か報われるわけじゃないけど。

厩戸「布都姫。死ね!」
 これがいわゆる「布都姫。死ね」である。コマはそれほど大きくない。
 ここで、もし布都姫を殺せていたら、その後の厩戸の人生は変わったのだろうか。
 布都姫がここで死んでいたら、毛人は布都姫をあきらめて、多少落ち込むことはあっても元通りになったのだろうか。
 うーん。それでこのあと本当にうまくいくのかは、正直ちょっと疑問だ。そもそも毛人はそれほどまで王子が好きなのか? 次々と都合の悪い政敵を亡き者をしていく王子をだ、これからもずっと好きでいられるのだろうか?
 とりあえうここは、あくまでも毛人に知られないことが前提で、もちろん調子麻呂や淡水にも内緒の行動だ。今まで何人も殺したり死なせてきた厩戸だが、それは政治向きのことで、やるかやられるかだった。動機が恋愛や嫉妬とか、そういう殺しは、やはり舎人にも知られたくないものなのか。
 だが、淡水は気付いているようだ。淡水の意図は何だろう? よく見ると,場面場面で淡水の「……」付き、いわくありげな顔カットがあったりする。それはどう見ても、王子と毛人の間を牽制しているようにしか思えない場面もあるではないか。なぜ淡水はそうまでして毛人を遠ざけようとしていたのか。

厩戸「………わからぬか」
 毛人は全くわかってなかったわけではなかった。思い当たることはいくつもあるはずだ。だけど,厩戸に言われるまで忘れていたようだ。だから毛人は何も考えてない男なんだってば。
 私は,昔読んだ時、毛人が多少なりとも厩戸に気持ちを残しているから、そこに多少なりともつながりや可能性のようなものを感じて、振られても毛人に未練を感じた。まだこっちを見てくれる可能性はあるんじゃないか。いや,昨日までこっちを見ていてくれたはずなのに、とかそういう気持ちだった。
 でも今読むと、それは違うとわかる。毛人は「布都姫だけが好き、他はどーでもいいきえろ」などと思っているわけじゃない。一番好きなのは布都姫かもしれないが、厩戸や阿部氏の娘も、それから一度はのろった刀自古にも、盗賊になった駒にさえも、情というものを残している。厩戸のように,どうでもいいヤツにはどこまでも無視という男ではないのだ。だから厩戸はそこを勘違いしている。毛人ははっきりいって,誰とだって仲良くなれるのである(^_^;)
 ところで、この場面に都合よく毛人がかけつけて来るって、出来すぎな気がする。やっぱり淡水が犯人ですかのう。毛人をここに誘導した的な。
 この後のベッドシーン(死語)で,一気に淡水が嫌いになってしまった人もいるかもしれない。前にも書いたと思うが,意外に俗っぽい男なので、王子への忠誠心と同時に人並みに下心のようなものもあるのだろう。
 だけど,改めて読み返すと,淡水の意図するところは「毛人はだめだ。王子にとってためにならない男だ」ということだったのかもしれない。実際、毛人は王子にはついていかなかった。淡水の読みは正しかった。
(第7巻へつづくのだ)

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