日出処の天子(完全版)第5巻

日出処の天子 〈完全版〉/第5巻(全7巻) (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)日出処の天子 〈完全版〉/第5巻(全7巻) (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
(2012/02/23)
山岸凉子

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 第5巻の物語。毛人をめぐって、布都姫、刀自古、王子の三つ巴に。結局、布都姫は大王の後宮へ。そして刀自古は身ごもったまま、厩戸の妃になる。

 5巻目は恐ろしくも驚愕の展開に!
 ここで女ふたり、布都姫と刀自古は、一世一代の大博打に出る。道徳も世間体も家も回りの人の不都合などどうでもいい、自分の身さえも捨ててかまわない。好きな男と一夜をともに!
 いうなれば、閨房のテロリストである。運が良ければ妊娠してしまうかも。男にはできない必殺の大技である。
 露見したらただではすまない。政権も家も転覆しかねない。毛人は多いに狼狽えている。一度は絶望して自殺まで考えた刀自古だが、妊娠したことで腹を決めたのだろう。
 この話の流れで布都姫は思いを遂げることはできなかったが、もし布都姫が妊娠するようなことになっていたら、多分刀自古と同じことをしたに違いない。私は布都姫は嫌いなキャラではあるけど、博打に打って出る女の考えることはだいたい同じだから、それはわかる。博打に出たらもう降りられない。結果についてはすべてを受け入れるしかないのだ。


印象に残ったシーン抜き書き
来目「そしてこれが、その、逃げたことへの答えなのですね」
 何気ないシーンだが、この作品の大事な解答がこんなところに転がっていた。
 来目は厩戸の同母弟。母と厩戸の微妙な関係の間に立って、子供なりにいろいろを気を使ってきた。こんな子供に何か期待する方がまちがっている。だから来目が悪いわけじゃない。むしろ逃げていたのは母であり、亡き父であり、厩戸であり、毛人なのではないか。

雄摩呂「俺ならおまえの傷なんか気にもしない」
 雄摩呂は、毛人たち兄妹にとって従兄弟にあたり、蘇我一族の集まりとかで、たまに画面に出てくる。このシーンは、珍しくひとりで刀自古に会いに来て、いわゆるプロポーズ。けっこう必死。しかし余計な一言で、あえなく振られてしまう。……言わなくても振られていただろうけど。
 落ち込んで帰るところを見ると、雄摩呂は別に悪い奴じゃない。でも刀自古にとっては男の頭数には入ってなくて、子供の時から無視しまくり。ここでもがつんとはねつけている。
 今改めて読み返すに、刀自古はなぜ兄しか見てないのだろう? 彼女にとって、この世に男は兄しかいないのは何故なのだろう。あんな事件に遭遇したからだろうか。それが原因で余計に視野を狭くしていることはあるかもしれないけど、でも河上や雄摩呂を邪険に扱っているのは子供の頃からだった。それは毛人至上主義?だったからだ。事件がなかったら、すんなり嫁に行ったのだろうか、というとそうとも思えないのね。
 雄摩呂はおおざっぱな顔の造型からしてボーイフレンドキャラどころか、毛人よりだいぶ落ちるけど、なんでもいいから好きって言ってくれる雄摩呂でも悪くないよね。昔読んだときは、ここのシーンは無神経な雄摩呂のために刀自古が傷つく、というふうに読んでいた。でも今読み返すと、人生の分岐点はこんなところにも転がっているものなんじゃないか、て思える。

大姫「あの、な 生意気な王子に……わ わたしは負けない。負けないんだから!」
 モブキャラだと思っていた大姫の、どきどき乙女シーン(^_^;)
 いよいよ厩戸が夜やってくる。お高くとまったお嬢様キャラが、ほっぺに斜め線が入って(^_^;)、実はウブな純情姫。外見の好みは別にして、いたって普通の女子。
 でも、このあとかわいそうな結末に。
 BLにおける女性キャラの扱いって、基本フラレ役だから。女性キャラが痛い思いをすることで、厩戸は幸せになれるのである。

厩戸「あれほど夜空を軽快に走ったことはない。笛でも吹きたいくらいだった」
 厩戸は大姫をほったらかして、無意識に毛人のところへ飛んで行ってしまう。閨房のテロリストなのは厩戸も同じ(^_^;) しかし厩戸はこの作品のヒロインなので、ヒロインの行動は愛の正義なのである。それも無意識に飛んで行ってしまうから、不可抗力のようなもの。計画的犯行(^_^;)である刀自古や布都姫の女のテロとはそこが違う。
 このシーンの印象的なコマは、まっくらな夜空をバックに、厩戸が振り返ると、飛天が後ろから飛んできてる絵。王子の高速飛行。音はきっと何か天上の音楽が聞こえているに違いない。

厩戸「倉梯宮へ知らせるのだ。ただちに石上から布都姫を立ち退かせねば、大王に仏罰が当たるぞ」
 毛人と布都姫を逢わせまいとするとする王子の必死の工作。男に暗示をかけて、動かす。
 このシーン、ルルーシュの声が聞こえてしまった(^_^;)

母「そなたたちの心がそう決まっているのであるならば、私も…… 目を閉じ、耳を塞ぎ、そなたたちの行く所まで、この母も一緒に参ります」
 母も共犯。
 これは毛人と刀自古の母の、刀自古の結婚の日のシーン。母は刀自古が妊娠していることはもちろん知っている。そして、ひょっとして子供の父親は…ということも気付いているかも。そうよね。読者にわかることは、当然母親も気付いているよね。
 この作品には、母という立ち位置のキャラが何人か出てくる。毛人の母、厩戸の母、額田部の女王。布都姫つきのおばあさんもそれに近いものがある。私が昔読んだときは、おばさんキャラのセリフは飾りくらいにしか思えなかった。今は私も歳をとったので、そこは違う。
 毛人の母は、ここまであまり役に立つ人でもなかった印象だが、しかし自分の息子のやることには黙って従うという古風な母である。

厩戸「鳴るではないか! 今の聞いたか!」
 非常に珍しい?厩戸と大姫の会話シーン。家宝の笛をもらった厩戸は、大姫の部屋でご機嫌。もちろん大姫はほったらかしだが、しかし大姫といたって普通の会話をしている。大姫はやっぱり厩戸のことが嫌いになれない。形だけの妻でも。
 刀自古が妊娠したまま厩戸の妃になるという話になったとき、ばたばたっとパズルのピースが埋まるように、このあとの流れが見えてきた。厩戸には記録でわかっているだけで4人の夫人がいた。厩戸をBLヒロインに設定して、そこはどう描くのだろう?というのは、連載が始まった時からの疑問であり関心事でもあった。大姫の不幸は、自分だけ王子に遠ざけられているのだと思い込んでいるところだ。いや、それはあなただけじゃない…実は刀自古も…と知ったら、安心して……いや(^_^;)それはないか。
 6巻へつづく。

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